Case study導入事例

「サーモモニタリン」導入事例インタビュー
サーモモニタリンによる自動測定で、金型の温度異常を早期発見。
品質不良や設備不具合を未然に防止!
株式会社戸畑ターレット工作所

自動車業界を中心とし、電力機器や住宅設備部品など様々な分野のアルミダイカスト部品や非鉄鍛造部品、機械加工部品の製造メーカーである、株式会社戸畑ターレット工作所。
九州北部唯一の「アルミダイカスト」量産メーカーであり、素材(鍛造、ダイカスト)から機械加工、アッセンブリまで一貫生産を行っております。
鋳造工程において、金型表面温度は品質に多大な影響を与えるため、温度放射計やハンディ式のサーモカメラを活用しておりました。ただし、いずれも人による測定であり、常時監視ではないことから、生産性向上につながらないという課題がありました。
そこで同社ではKMCの「サーモモニタリン」を導入。
製造・生産技術・DX推進と三位一体となって、サーモモニタリンを活用した、金型表面温度管理の運用化を進めています。
金型の温度異常を早期発見できることにより、品質不良や設備不具合を未然に防ぐことができるようになりました。
今回は「サーモモニタリン」をご活用いただいている同社第二工場を訪問し、生産技術部長の四海邦治様、生産技術課の西久保春香様にお話を伺いました。


課題


― 改めて、貴社の事業の概要についてお聞かせください。

(四海様)弊社は鍛造・ダイカストの素材から機械加工、アッセンブリまで一貫生産を行っており、鉄並みの高強度アルミ鍛造を量産できるメーカーです。自動車部品を中心に、電力機器部品や住宅設備部品を製造しております。九州北部にはトヨタ自動車九州様、日産自動車九州様、ダイハツ九州様、日産車体九州様の4つの自動車メーカーが立地しておりますが、弊社はほぼその中央部に拠点を構え、九州北部唯一のアルミダイカスト量産メーカーとして、ウォーターポンプやオイルポンプ、ステアリング部品やヘッドライトのヒートシンクなど様々な部品を提供しており、自動車部品の売上比率は51%を占めております。その他、配電部品などの電力機器部品が28%、水道の蛇口やシャワー部品といった住宅設備部品が17%を占めております。

― 製造工程の中でどんな課題があったのでしょうか?

(四海様)鋳造工程では、金型温度が品質に大きな影響を与えるため、金型表面温度の管理が必要だと考えておりました。焼付きやカジリ、湯回り欠陥、巣不良や入子ピン破損といった金型自体の破損といった不具合に直結するためです。

― その課題に対して、何か対策を講じてましたでしょうか?

(西久保様)2018年頃から、焼付きなど問題が発生する金型の特定場所に対し、製造現場の作業者が、初・中・終(朝昼晩)のタイミングで定期的に非接触式の放射温度計を用いて、型温を測定しておりました。製品によっては、1時間おきに測定することもあり、現場には負担をかけておりました。それでも不具合が発生した場合は、生技メンバーによるハンディ式のサーモカメラを使って金型全体の表面温度を測り、正常時との比較を実施しておりました。
第二工場 生産技術部 部長 四海 邦治 様
第二工場 生産技術部 部長
四海 邦治 様
第二工場 生産技術部 生産技術課 副主任 西久保 春香 様
第二工場 生産技術部 生産技術課 副主任
西久保 春香 様

― その対策では不十分だったということでしょうか?

(四海様)以下4つの理由で問題があり、私たちのニーズを満足させるものではありませんでした。
① 不具合が発生したタイミング・ショット時の金型表面温度が確認できない。
② 不具合発生後の後追い確認になるため、大量不良を作ってしまい生産性が悪化する。
③ 測定が人の作業のため、撮影タイミングにバラつきがあり、常時監視ができない。
④ 金型の部分的な型温確認のため、全体の型温状態変化がわからない。
※③については、安全扉の隙間から狙うため、狙ったところに当たらないなど、バラつきが出ておりました。


― それでは弊社の「サーモモニタリン」を知ったきっかけをお聞かせ下さい。


(四海様)2020年に当社に赴任した際、ダイカスト工場・技術・品質・管理面等で数値評価を実施しましたが、当時はまだレベルが低く、まずはダイカストにおいて、 町工場から国内で戦えるレベルに底上げしたいとの想いからロードマップを作り、工場管理・技術・品質・安全等の向上を進めています。その中の施策の1つに、“ダイカスト金型温度の見える化(金型温度上下限管理)”をテーマとして、取り上げました。
良品温度を下回ると、湯回り不良や水残りが出て、不良が出ます。良品温度の範囲内で生産していければいいですが、冷却が詰まったりして、上限温度を超えると焼付きやカジリが発生します。金型温度の上下限を見える化し、将来的にはこれで制御していきたいと考えています。まずはロードマップのStep1としては、見える化をテーマとしてあげました。

しかし、ダイカストは離型剤の飛散や雰囲気温度が高いなど過酷な環境であることが前提であります。これらに対応できるシステムは高価なものが多く、また中小企業独自でゼロからの開発は非常に難しいと考えていました。そのような中、新聞で「サーモモニタリン」の記事を見て、私たちのニーズに低コストで対応できそうであることを知り調査を開始しました。
ロードマップにおけるStep1
ロードマップにおけるStep1


― 他のシステムも検討されましたでしょうか?
また、ご採用いただいたポイントもお聞かせ下さい。


(四海様)「サーモモニタリン」導入にあたり、某赤外線カメラメーカーのダイカスト金型温度測定システムや金型の冷却システムを調査しました。ただし、カメラ自体が高価であることや、冷却システムでは、金型温度自体は別で測定する必要がある、またカメラサイズや撮影タイミングへの対応など、ニーズに合うメーカーが見つかりませんでした。
また、熱電対による金型温度測定も検討はしましたが、金型ごとに熱電対を埋め込まなくてはならないことや、ピンポイントでの測定しかできず、費用対効果が見込めませんでした。

それと比較し「サーモモニタリン」は、安価な価格設定でありながら、ダイカストの過酷な環境にも対応していること、また金型温度の閾値設定やデータ管理などソフトウェアの機能面で当社の要求事項を満たすと判断し導入いたしました。
プラテン部に固定サーモモニタリン
プラテン部に固定 サーモモニタリン


― 現在の活用方法をお聞かせ下さい。


(四海様)2022年に2台導入、2023年には1台追加し、現在は3台で運用しています。3台のダイカストマシンに取付け、それぞれ可動型のスプレー前後の温度監視に活用しており、当社のDX推進メンバーと共に、金型温度管理の運用化を進めています。

(西久保様)具体的には主に以下の3点を実施しています。
① 製品不良や設備不良が起きた際の原因究明
② 過去鋳造時の履歴を比較し冷却量の調整
③ サーモモニタリンで取得したデータを元に、エリアごとの型温をリアルタイムグラフ化
ダイカスト鋳造ライン
ダイカスト鋳造ライン


① 製品不良や設備不良が起きた際の原因究明
製品不良や設備不良が発生した時に、原因究明として必要とするエリアごとに設定でき、打ち始めからのショット数を品番毎に合わせて比較できることで、「ここのスライドの温度が違うね」といった原因を正確に突き止められ、対策が立てやすくなるので、非常に助かっています。

② 過去鋳造時の履歴を比較し冷却量の調整
サーモモニタリンは過去のデータが自動的に蓄積されるので、履歴を比較し、そのデータを元に冷却量の調整を行っております。

③ サーモモニタリンで取得したデータを元に、エリアごとの型温をリアルタイムグラフ化
各号機におけるスプレー前後の最大温度をモニタリングツールで表示しています。急激な型温の変化を監視することで、冷却の詰まりや水漏れの検知など、金型温度異常の見える化を実施しております。

今後の運用に向けて、金型温度の異常発生時に、製造現場作業者へタブレットで異常を知らせ、早い段階で対応できる仕組みを構築しております。


― 導入後、どのような効果が出ましたでしょうか?

(西久保様)冷却詰まりや水漏れ検知による、金型の温度異常を早期に発見できることにより、早期打ち止めの判断が可能になりました。そのまま打ち続けると、品質不良の流出や、ホースの破裂など様々な設備自体の不具合につながる可能性もありますが、それを未然に防ぐことができるのは非常に大きいです。

また、冷却量の調整を行いやすくなりました。今まで型温の管理がしっかりできていなかったので、冷却水のバルブの開度で判断しておりましたが、そうすると季節によって変わってしまったり、人の開け具合によって変わってしまうので、日によって型温が違ったりすることがありました。現在はサーモモニタリンで取得した型温を基準として運用しており、それに合わせた冷却水の調整ができるようになりました。

他にも、不良が大量発生した際、当時の金型温度を日ごと・エリアごとで比較し、「この日はここの温度が高いから、不良が発生した」というのが正確にわかるようになりました。対策が立てやすくなるので、とても助かっています。


サーモモニタリンのデータを元にモニタリングツールで可視化


― それでは最後に、「サーモモニタリン」に期待することをお聞かせください。

(西久保様)カメラズレの位置補正ができる機能を開発していただきたいです。もう少し言えば、自動フォーカス機能も欲しいかな。より正確、より鮮明な型温画像化。
(四海様)カメラレンズの汚れを検知する機能もあればうれしいです。

― 開発にフィードバックさせていただきます。お忙しい中、誠にありがとうございました。
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